九谷焼とは


九谷焼(くたにやき)は、石川県加賀市周辺で作られている陶磁器です。色絵のついた陶磁器の伝統工芸品で、江戸時代前期に誕生しました。

九谷焼の特徴は、鮮やかな色彩と大胆かつ優美な紋様、そして「上絵付け」と呼ばれる技法です。上絵付けとは釉薬の上に顔料で絵付けを行い、再度焼く技法のことです。上絵付けに使われる上絵の具は800度程度で焼き付けできるため、顔料の制約が少なく、多彩な色彩が楽しめます。九谷焼のほかに有田焼でも用いられている技法です。

九谷焼の色彩はいずれも鮮やかですが、種類により少々異なります。通称「九谷五彩」と呼ばれる5つの色(赤・黄・緑・紫・紺青)を使うものは、古九谷と木米風です。吉田屋風は、青・黄・紫・紺青の四鮮が美しく、飯田屋風は「久谷赤絵」と呼ばれるほど特徴的な赤色が目立ちます。永楽風は艶やかな赤と金が施され、庄三風は古九谷・吉田屋・赤絵・金欄手の手法を兼ね備えたバランスの良さが美しい九谷焼です。

(出典:KOGEI JAPAN)

制作工程


1. 陶石の粉砕

まず、原料となる陶石を採掘し、粉砕機で細かく砕いて粉末にします。陶石を砕いて作った粉末には不純物が混ざっているため、このままでは使えません。粉末を水につけて濾す「水簸(すいひ)」を行い、不純物を取り除きます。不純物を取り除いて余分な水分を飛ばし、練り上げて空気を抜いたら坏土(はいど)の出来上がりです。

 

2. 成形

ろくろ、ひも作り、手びねり、タタラ作り、鋳込みなど、様々な方法で形を作っていきます。高台の削り出しや後付・つまみ作り・縁の仕上げ・模様彫りなど、細かい部分の仕上げを行うのは、成形後です。仕上げまでできたら天日でしっかり乾燥させ、約800~900度で8時間ほど素焼きします。なお、素焼きをすると土の色が灰色から肌色に変わり、強度を高くなって次の工程(釉薬かけや下絵付け)がしやすくなります。

 

3. 施釉(せゆう)・本窯(ほんがま)

下絵付けが終わったら釉薬(ゆうやく)をかけます。使うのは、焼きあがった時に透明になるという特徴を持つ「白釉(はくゆう)」という釉薬で、本焼きによってガラス質になります。焼き物の表面がガラス質で覆われることにより、器を強化し、器の汚れを防げます。なお、釉薬は厚すぎても薄すぎてもいけません。手早く丁寧かつ均等につけることが大切です。施釉が終わったらいよいよ本窯で、1,300度の高温で15時間ほど焼きます。

 

4. 上絵付け

上絵の具を使って彩色していきます。彩色で描かれる紋様や使われる色は、九谷焼の種類によって様々です。彩色の前に黒色の呉須で骨描き(こつがき)をすることもあります。骨描き(こつがき)とは輪郭線を引くことで、日本画でも使われる手法です。上絵付けが終わったら、800~1,000度で焼成します。この焼成によって上絵の具が釉薬に定着し、美しく発色します。

 

永楽風など、陶磁器のデザインによっては、金彩(きんさい)や銀彩(ぎんさい)を施すことがあります。金彩では金箔を、銀彩では銀箔をはりつけ、その上から釉薬をかけ、もう一度焼成します。焼成温度は約400度で、最後の焼成が終われば九谷焼の完成となります。

(出典:KOGEI JAPAN)